「感情」についての対応を整理しておきたいと思います。
「感情」が出てきたら関わっていく、つまり、「感情の反映」(reflection of feeling)ですね。これは誰でも分かっている。とは言うものの、いざ「感情の反映」をやろうとすると上手くいかないこともあるのではないかと思います。
まず、「感情」は意識ではなく「感覚」であるということですね。従って、自分の感情を言葉で説明するのは結構難しい。怒り、悲しみといった強い感情であればまだしも複雑な感情になってくると、いろいろな感情が湧いてきて混乱することさえあります。
無理に説明しようとすると頭で考える、つまり理論的に既成概念の中で考え出すことになりますので、ますます「感覚」から離れていってしまう。従って、「感情を引き出す」ことはあまり推奨しません。
ですが、理論書によっては「感情を引き出す」と書いてあるものも見受けられますので、ややこしいですね。しかし、よく読んでみると、いろいろ条件がついている。控えめに、声の調子を工夫して、一呼吸置いてから、短く、シンプルに、最も強い感情に対してのみ・・・。勿論、翻訳上の問題もあるかと思いますが、どうやら注意して使わないと大変危険だという点は間違いなさそうです。
カウンセリングなど心理臨床に近い分野では、「話の内容よりも、”どうして”そのことを相談に来ているのか」に着目すると言われます。”どうして”とは要するに「執着」、こだわりですね。あることにこだわっているから感覚としての「感情」が生まれる。その背景には「執着」(考え・価値観・意味等)があり、行動を規制している訳ですから、「感情」はその「執着」にたどりつく大切なヒントになるわけです。(JCDAでは感情に関連して主訴の把握を重視しています。)
従って、「感情」を正確に把握しないと、間違った問題提起、問題解決を引き起こし、ミスリードしてしまう。こうしたことからロジャーズ始め多くの理論家が「感情の反映」の重要性を強調してきました。
この理解に立ってみると、「感情の反映」というのは単なる手法ではなく、面談の流れに沿って行う基本的なスタンス(≒傾聴)なのではないかと私は思っています。お話の内容を聴きながら、同時に相談者の心理状態もモニターしていく。内容/事柄や言葉だけに着目していると、人間心理の複雑性、両価性は理解しにくくなります。従って、お話を聴き、時折「感情の反映」としての伝え返しを行いながら自己理解の支援をしていくというのが本来の面談だと思います。
さて、これほど偉大な?「感情の反映」ですので、キャリコン試験でも必須、と考えるのは当然ですね。その典型が、
どんなお気持ちですか? どんな感じですか?
~という感じに見えましたが、いかがですか?
という質問です。
確かに、こうした表現が有効である場合もあります。しかし、状況や場の雰囲気を理解し、信頼関係が構築できた段階でないと、お話の流れを急にせき止めてしまいます。
そこで、当会では、最初は「相談者が使った言葉の非言語表現を加味した正確な伝え返し」から始めることを推奨しています。こうした方が安全であり、効果的だと思います。
正確な伝え返しが出来てくると、状況が理解出来てきます。最初の5分でやるのはお話の流れに沿った正確な状況把握です。状況を把握しながら、言語、非言語を通じて感情をモニターし、相談者の「感覚feeling」を感じ取ります。
そして、相談者によって感情が言語化されたら、つまり「感情を表す言葉」が出てきたらそれを正確に伝え返します。『感情の反映』とは広くは「繰り返し」と「言い直し」のことですから、まず最初の段階では「繰り返し」を行うということです。(※「言い直し」の部分は、モニターのフィードバックであり、核心部分ですので上級スキルです。受験生レベルでは負荷が大きく、基礎、基本に注力した方が賢明だと思いますので、割愛します。)
これさえできれば「感情にかかわる」ことが出来ていることになりますので、無理に「お気持ちは?」などと訊く必要はありません。
「お気持ちは?」とは、お気持ちが分からないので教えて下さい、ということですし、前述の通り、気持ちの整理がつかない段階では頭で考えさせてしまいます。「お気持ち」は状況についてのお話を通じて、次第に整理がついてくるものです。従って、「急がせない」という意味からも試験時間=最初の15分の中ではそうした場面にはなかなかならないのではないかと思います。
心理臨床などでは、とても悲しい気持ちなのに状況を淡々とお話されるケースがあります。淡々と、淡々と・・・。話し終わり、大きなため息・・・。そんな時、そっと「どんな、お気持ちですか・・・?」なら、効果的かと思いますが、キャリコン試験のケースでは考えにくいことですね。受験生には「場面に相応しい応答」という視点を是非持って頂きたいと思います。
また、「~と感じますが、いかがですか?」も最初の段階からやると、話の方向性を決定づけてしまい誘導にもなり兼ねませんので注意してください。
信頼関係の構築、感情の反映まではJCDA、協議会共通のアプローチです。キャリアコンサルタントとして正しく、状況及び感情にかかわってください。最初の段階から、安易に、「お気持ちは?」「~と見えますがいかがですか?」は危険な場合があります。
感情へのかかわりができたら、JCDA、協議会でアプローチが違ってきますので、『テキスト』等で確認しておいてください。
(ご参考)
『キャリコン実践研究会』(ホームページ)
実技試験対策『テキスト』のお申込み
テキストと同時に「サブテキスト」(傾聴/論述/口頭試問)もお申込できます。論述対策には『過去問分析』もありますが、これらのお申込には『テキスト』のお申込が前提となっております。詳しくはホームページをご覧ください。
「感情」が出てきたら関わっていく、つまり、「感情の反映」(reflection of feeling)ですね。これは誰でも分かっている。とは言うものの、いざ「感情の反映」をやろうとすると上手くいかないこともあるのではないかと思います。
まず、「感情」は意識ではなく「感覚」であるということですね。従って、自分の感情を言葉で説明するのは結構難しい。怒り、悲しみといった強い感情であればまだしも複雑な感情になってくると、いろいろな感情が湧いてきて混乱することさえあります。
無理に説明しようとすると頭で考える、つまり理論的に既成概念の中で考え出すことになりますので、ますます「感覚」から離れていってしまう。従って、「感情を引き出す」ことはあまり推奨しません。
ですが、理論書によっては「感情を引き出す」と書いてあるものも見受けられますので、ややこしいですね。しかし、よく読んでみると、いろいろ条件がついている。控えめに、声の調子を工夫して、一呼吸置いてから、短く、シンプルに、最も強い感情に対してのみ・・・。勿論、翻訳上の問題もあるかと思いますが、どうやら注意して使わないと大変危険だという点は間違いなさそうです。
カウンセリングなど心理臨床に近い分野では、「話の内容よりも、”どうして”そのことを相談に来ているのか」に着目すると言われます。”どうして”とは要するに「執着」、こだわりですね。あることにこだわっているから感覚としての「感情」が生まれる。その背景には「執着」(考え・価値観・意味等)があり、行動を規制している訳ですから、「感情」はその「執着」にたどりつく大切なヒントになるわけです。(JCDAでは感情に関連して主訴の把握を重視しています。)
従って、「感情」を正確に把握しないと、間違った問題提起、問題解決を引き起こし、ミスリードしてしまう。こうしたことからロジャーズ始め多くの理論家が「感情の反映」の重要性を強調してきました。
この理解に立ってみると、「感情の反映」というのは単なる手法ではなく、面談の流れに沿って行う基本的なスタンス(≒傾聴)なのではないかと私は思っています。お話の内容を聴きながら、同時に相談者の心理状態もモニターしていく。内容/事柄や言葉だけに着目していると、人間心理の複雑性、両価性は理解しにくくなります。従って、お話を聴き、時折「感情の反映」としての伝え返しを行いながら自己理解の支援をしていくというのが本来の面談だと思います。
さて、これほど偉大な?「感情の反映」ですので、キャリコン試験でも必須、と考えるのは当然ですね。その典型が、
どんなお気持ちですか? どんな感じですか?
~という感じに見えましたが、いかがですか?
という質問です。
確かに、こうした表現が有効である場合もあります。しかし、状況や場の雰囲気を理解し、信頼関係が構築できた段階でないと、お話の流れを急にせき止めてしまいます。
そこで、当会では、最初は「相談者が使った言葉の非言語表現を加味した正確な伝え返し」から始めることを推奨しています。こうした方が安全であり、効果的だと思います。
正確な伝え返しが出来てくると、状況が理解出来てきます。最初の5分でやるのはお話の流れに沿った正確な状況把握です。状況を把握しながら、言語、非言語を通じて感情をモニターし、相談者の「感覚feeling」を感じ取ります。
そして、相談者によって感情が言語化されたら、つまり「感情を表す言葉」が出てきたらそれを正確に伝え返します。『感情の反映』とは広くは「繰り返し」と「言い直し」のことですから、まず最初の段階では「繰り返し」を行うということです。(※「言い直し」の部分は、モニターのフィードバックであり、核心部分ですので上級スキルです。受験生レベルでは負荷が大きく、基礎、基本に注力した方が賢明だと思いますので、割愛します。)
これさえできれば「感情にかかわる」ことが出来ていることになりますので、無理に「お気持ちは?」などと訊く必要はありません。
「お気持ちは?」とは、お気持ちが分からないので教えて下さい、ということですし、前述の通り、気持ちの整理がつかない段階では頭で考えさせてしまいます。「お気持ち」は状況についてのお話を通じて、次第に整理がついてくるものです。従って、「急がせない」という意味からも試験時間=最初の15分の中ではそうした場面にはなかなかならないのではないかと思います。
心理臨床などでは、とても悲しい気持ちなのに状況を淡々とお話されるケースがあります。淡々と、淡々と・・・。話し終わり、大きなため息・・・。そんな時、そっと「どんな、お気持ちですか・・・?」なら、効果的かと思いますが、キャリコン試験のケースでは考えにくいことですね。受験生には「場面に相応しい応答」という視点を是非持って頂きたいと思います。
また、「~と感じますが、いかがですか?」も最初の段階からやると、話の方向性を決定づけてしまい誘導にもなり兼ねませんので注意してください。
信頼関係の構築、感情の反映まではJCDA、協議会共通のアプローチです。キャリアコンサルタントとして正しく、状況及び感情にかかわってください。最初の段階から、安易に、「お気持ちは?」「~と見えますがいかがですか?」は危険な場合があります。
感情へのかかわりができたら、JCDA、協議会でアプローチが違ってきますので、『テキスト』等で確認しておいてください。
(ご参考)
『キャリコン実践研究会』(ホームページ)
実技試験対策『テキスト』のお申込み
テキストと同時に「サブテキスト」(傾聴/論述/口頭試問)もお申込できます。論述対策には『過去問分析』もありますが、これらのお申込には『テキスト』のお申込が前提となっております。詳しくはホームページをご覧ください。