2017年12月

論述から面接へ(2/2)

※論述試験が終わり、面接試験が迫ってきました。論述試験は面接試験とセットになって実技試験を構成していますので、両者の間には当然のことながら関連性が見て取れます。そうした観点から、最後の仕上げとして面接試験対策を考えてみたいと思います。(以上、1/2と同文)

前回は、日本キャリア開発協会(JCDA)試験を取り上げましたので、JCDA受験者はこちらからお読みください。⇒「論述から面接へ(1/2)

今回はキャリアコンサルティング協議会試験を取り上げます。論述の事例に沿って面接試験の留意点を考えましょう。

育児休暇を終えて復職して半年、同期の女性が管理職になった。自分は仕事も子育ても中途半端で、将来どうなるか不安。今後の働き方を相談したい、とのお話です。

キャリコンとしてまずやることは、この相談ごとの状況(事柄)や心情(感情)をしっかり受け止めることです。そして、大事なことはその様に受容したことを相談者に示すことです。

しっかり受け止めたことを示すには、お話を網羅的に全て示すよりは、核心、つまり、キーワードを端的に捉え、伝え返すことですね。そうすることによって、相談者は頭の中の整理が出来ると共に、キャリコンが信頼に足る支援者だと理解することが出来、信頼関係が築かれるわけです。

最初の段階で、どう展開しようとか、問題は何だろうと、まだ語られていない領域について思いを巡らすのは禁物です。ましてやそうした領域についての質問をしてしまうと、相談者の話を封印してしまうことにもなりかねませんので、注意してください。

「ショック」。これは強い言葉ですからしっかり受け止めます。また、ポイントを絞って端的に伝え返すことによって会話にリズムが出てきますので実践してみて下さい。

さて、ポイントはその後にどう展開するかです。

ここで、「ショックとは?」と一歩踏み込んでいくやり方はどうでしょう? 一概には言えませんが、通常ですと、まだ前段であり、十分お話されたという状況でも無さそうですので、ここは伝え返しのみで、様子を見る。お話が出て来なければ、お話し易いテーマから状況確認を続けるという方が安全ではないかと思います。

こうやってまずは信頼関係を構築し、状況についてお話を促していくと、だんだん情報が集まってきますので、その中から見立てを行っていきます。

例えば、「責任のある仕事」「必要以上に配慮」「中途半端な仕事」「(女性)管理職」「将来が不安」「今の働き方」・・・

こうしたお話から、管理職に昇進した同期の女性が引き金になって、違う働き方に不安を覚えている相談者像が浮かび上がって来ます。

ひとには固有の価値観があるのに、同期と比較して不安になっている相談者の自己理解的側面。そして、管理職や働き方について一方的に思い込んでいる節もあり、仕事理解面にも問題がありそうです。

さらに、「将来が気になる」と言う点からはキャリアプラン、「働き方」と言う点からはワーク・ライフ・バランスも気になります。

以上から、面接を通じて、「相談者は何が気になっているのか?」 そして、「そのことについてどう思っている(捉えている)のか?」を明確にしていけばいいということが分かるかと思います。

そうした見立てが出来たら、後は目標の提案ですね。前段で把握した「相談者が相談したい問題」と整合性を取り、論述問題文のように提案してみると良いでしょう。そして、同意をいただけたら、方策を働き掛けていくことになります。(詳しくは『テキスト』をご参照ください。)

面接試験のポイントは最初の2~3分だと思います。この時に、余計なことを考えずに、純粋に相談者のお話を聴くことができるか。聴いた上で受容、共感し、適切に伝え返せるか。ここさえしっかりできれば、後は学習を積んで来られた皆様にはさほど難しい展開にはならないと思います。

残された時間はわずかですが、まだまだ実力Upは可能です。最後の最後まで諦めず、テキスト・サブテキスト、また講座でのコメントを活かし、相談者の支援に努めてください。応援しています。

(ご参考)
キャリコン実践研究会』(ホームページ)

論述から面接へ(1/2)

論述試験が終わり、面接試験が迫ってきました。論述試験は面接試験とセットになって実技試験を構成していますので、両者の間には当然のことながら関連性が見て取れます。そうした観点から、最後の仕上げとして面接試験対策を考えてみたいと思います。

まずは、先に行われる日本キャリア開発協会(JCDA)試験から。

「新しい上司から細かいところまで指示されるのでやる気を無くした」というお話です。さて、キャリコンとしての対応ですが、どうしますか?

ひとつは、「そうか、細かく指示をする上司が問題なんだ」と表面的・短絡的にに事象を捉えてしまう危険な対応です。そして、その問題を解決しようと転職の提案までしちゃったら、完全にアウトですね。まあ、転職まで考える人は少ないと思いますが、早い段階から解決を図ろう、話を進めようとする対応は時々見られますので注意してください。

この対応は、一般的価値観による対応、事象を鵜呑みにした対応とも言えます。では、こうした事象を疑ってかかることが適切か?というと、それもまた危険です。(このへんが難しいところです。)なぜならば、それはとても大切な「受容・共感」に反した対応になってしまうからです。

では、どうしたらいいのでしょうか?

まず、基本的な人間理解として、「ひとには『固有』の価値観がある」という点を押さえておきましょう。(一般的価値観で解釈・評価してしまっては相談者理解はできないということになります。)

「(相談者の)固有の価値観」は、キャリコンがいくら考えても分かりません。そして、とても大事なことですが、「自分の固有の価値観」は当たり前すぎて本人の意識からも薄れていることが多々あります。(ですから、キャリコンが必要とされるんですね。)

キャリコンが行うことは、「相談者固有の価値観は私には分かりませんので教えてください」というスタンスに立って、まず相談者を「受け入れる」こと、受容です。そして、「相談者の立場」に立って共感することです。そうすることによって信頼関係が築かれ、相談者は心を開いて、自分を語る(自己探索)ことができる。そこに「気づき」が生まれ、自己成長につながるという流れです。相談者の価値観を「キャリコン自身の価値観」で疑い、質問で解明しようとするアプローチでは返って相談者の心を閉ざしてしまいます。

「正しいキャリコンの価値観」は前述の「ひとには『固有』の価値観がある」という価値観です。従って、「細かいところまで指示されるのでやる気を無くした」とのお話を受け、「細かい指示についてやる気を無くしたのは何か背景があるんだろうな、どうして、そう思ったんだろう。」と「問い」を抱くことが重要です。

そして、その問いをすぐに質問して解明しようとするのではなく、(相談者のお話に沿って傾聴を優先させ)「問いを持ち続ける」ことが大切です。と言うのも、ご本人にとっては当たり前のことですから、急に質問されても(話し足りないことがあった場合には)説明し難いことがあるんですね。

従って、賢いキャリコンは話しやすい場づくり、話しやすい応答を心がけていきます。つまり、話しやすいテーマを選んでいく訳ですね。まずは現時点の事象・状況をお話しいただき、その中から感じ取った、あるいは語られた『感情』を手掛かりにしていく。そうすれば、例えば「やる気を無くした」心情から「悲しくなった」変化が浮き彫りになってくる。まさに、相談者に寄り添ったアプローチです。

こしたリアルな感情が見えてきたら、それは相談者の気がかりを示していることになりますので、そこに横たわる相談者の考え・価値観を明らかにしていきます。現在の考え・価値観は一朝一夕にできたものではなく、過去の『経験』にルーツがありますので、この段階で初めて、現在から過去に話題が変わっていくんですね。この順序がとても重要です。「テキスト」にも書きましたが、あくまでも現在(今・ここ)が起点になって、過去に行き、そしてまた現在に戻ってくるという流れです。最初から過去に行ってしまっては気づきにつながりませんので注意してください。

この様な対応をしていくと、やっと「上司の指示」に対する『ものの見方』にどうやらポイントがありそうだなという見立てが出来てきます。キャリコンの勘で抱いた「問い」に光が見えてきた感じですね。ここまで来たら・・・、後は、この「ものの見方」つまり、「認知」について解きほぐしていくことになります。

以上、論述試験をベースにして面接の流れをおさらいしてみました。但し、紙面では伝えきれないことがたくさんありますので、前記「テキスト」や「ロープレ演習」でのコメントを参考にしてください。とは言うものの「やり方」はいろいろありますので、ご自身が納得、理解した上で面談を進めてください。試験官が見ているのは受講生のそうした姿勢だと思います。試験対策の王道は”真の理解”です。頑張ってください。

次回、2/2は、キャリアコンサルティング協議会の論述問題から面接試験を振り返ってみたいと思います。

(ご参考)
キャリコン実践研究会』(ホームページ)
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