2017年11月

第6回論述試験に向けて

キャリアコンサルタント第6回論述試験直前です。合否を左右する大きな分岐点となりますので、落ち着いて最後まで諦めずにがんばってください。

論述試験の50分間は、自分でコントロールできる時間です。全受験生平等の条件のもと、自分のやり方次第という試験ですね。従って、まずは時間管理をしっかりやってください。限られた時間内で的確に、素早く判断しなければいけませんが、試験問題全体を眺めた上で時間配分を決めておくといいでしょう。

回答欄からはみ出さないよう、また採点者が判断しやすい読みやすい文字および大きさで記載し、設問の主旨をしっかり押さえるのが基本です。

個々の設問や設問の流れの中にもヒントがあります。出題者は何を求めているのでしょうね。きっと、キャリコンのスタートラインに立てるか否かの判断において、最低限これだけは理解してほしい、そんなものが背景にあると思われます。

さて、過去3回、同じような出題形式が続いています。従って、今回も同じような形式になることが予想されます。一方で、3回も続いたので、今回は変わることも・・・。そうなっても驚かいないでくださいね。条件はみんな一緒ですから落ち着いて、そして、基本に沿って解答すればいいと思います。

どんな出題形式であっても、事例/逐語はきっと出てくる筈です。事例が出てきたら、まず応答をチェック! 何を語り掛け、何が返ってきているか。それが横糸だとしたら、縦糸は? つまり、キャリコンの逐語の流れと相談者のお話の流れをそれぞれチェック! そうすれば、いろいろ見えてきますよ。後は、日頃学んできたことから答を出していくだけです。

JCDAとキャリアコンサルティング協議会では、キャリアコンサルティングの手順が違いますので、その点をしっかり押さえてください。特に「相談者の問題のとらえ方」に典型的な違いが見られますので、出題の核心になると思います。

見直しの時間は是非ともほしいですね。但し、時間が足りなかったら、誤字・脱字あるいは読みにくい字の修正に留め、迷っている内容の訂正には入らない方が賢明だと思います。

では、先入観にとらわれず、素直な気持ちで、問題用紙の中に現れる「相談者」に向き合ってください。応援しています。

(ご参考)
キャリコン実践研究会』(ホームページ)

受験レベルの「感情の反映」

「感情」についての対応を整理しておきたいと思います。

「感情」が出てきたら関わっていく、つまり、「感情の反映」(reflection of feeling)ですね。これは誰でも分かっている。とは言うものの、いざ「感情の反映」をやろうとすると上手くいかないこともあるのではないかと思います。

まず、「感情」は意識ではなく「感覚」であるということですね。従って、自分の感情を言葉で説明するのは結構難しい。怒り、悲しみといった強い感情であればまだしも複雑な感情になってくると、いろいろな感情が湧いてきて混乱することさえあります。

無理に説明しようとすると頭で考える、つまり理論的に既成概念の中で考え出すことになりますので、ますます「感覚」から離れていってしまう。従って、「感情を引き出す」ことはあまり推奨しません。

ですが、理論書によっては「感情を引き出す」と書いてあるものも見受けられますので、ややこしいですね。しかし、よく読んでみると、いろいろ条件がついている。控えめに、声の調子を工夫して、一呼吸置いてから、短く、シンプルに、最も強い感情に対してのみ・・・。勿論、翻訳上の問題もあるかと思いますが、どうやら注意して使わないと大変危険だという点は間違いなさそうです。

カウンセリングなど心理臨床に近い分野では、「話の内容よりも、”どうして”そのことを相談に来ているのか」に着目すると言われます。”どうして”とは要するに「執着」、こだわりですね。あることにこだわっているから感覚としての「感情」が生まれる。その背景には「執着」(考え・価値観・意味等)があり、行動を規制している訳ですから、「感情」はその「執着」にたどりつく大切なヒントになるわけです。(JCDAでは感情に関連して主訴の把握を重視しています。)

従って、「感情」を正確に把握しないと、間違った問題提起、問題解決を引き起こし、ミスリードしてしまう。こうしたことからロジャーズ始め多くの理論家が「感情の反映」の重要性を強調してきました。

この理解に立ってみると、「感情の反映」というのは単なる手法ではなく、面談の流れに沿って行う基本的なスタンス(≒傾聴)なのではないかと私は思っています。お話の内容を聴きながら、同時に相談者の心理状態もモニターしていく。内容/事柄や言葉だけに着目していると、人間心理の複雑性、両価性は理解しにくくなります。従って、お話を聴き、時折「感情の反映」としての伝え返しを行いながら自己理解の支援をしていくというのが本来の面談だと思います。


さて、これほど偉大な?「感情の反映」ですので、キャリコン試験でも必須、と考えるのは当然ですね。その典型が、
どんなお気持ちですか? どんな感じですか?
~という感じに見えましたが、いかがですか?
という質問です。

確かに、こうした表現が有効である場合もあります。しかし、状況や場の雰囲気を理解し、信頼関係が構築できた段階でないと、お話の流れを急にせき止めてしまいます。

そこで、当会では、最初は「相談者が使った言葉の非言語表現を加味した正確な伝え返し」から始めることを推奨しています。こうした方が安全であり、効果的だと思います。

正確な伝え返しが出来てくると、状況が理解出来てきます。最初の5分でやるのはお話の流れに沿った正確な状況把握です。状況を把握しながら、言語、非言語を通じて感情をモニターし、相談者の「感覚feeling」を感じ取ります。

そして、相談者によって感情が言語化されたら、つまり「感情を表す言葉」が出てきたらそれを正確に伝え返します。『感情の反映』とは広くは「繰り返し」と「言い直し」のことですから、まず最初の段階では「繰り返し」を行うということです。(※「言い直し」の部分は、モニターのフィードバックであり、核心部分ですので上級スキルです。受験生レベルでは負荷が大きく、基礎、基本に注力した方が賢明だと思いますので、割愛します。)

これさえできれば「感情にかかわる」ことが出来ていることになりますので、無理に「お気持ちは?」などと訊く必要はありません。

「お気持ちは?」とは、お気持ちが分からないので教えて下さい、ということですし、前述の通り、気持ちの整理がつかない段階では頭で考えさせてしまいます。「お気持ち」は状況についてのお話を通じて、次第に整理がついてくるものです。従って、「急がせない」という意味からも試験時間=最初の15分の中ではそうした場面にはなかなかならないのではないかと思います。

心理臨床などでは、とても悲しい気持ちなのに状況を淡々とお話されるケースがあります。淡々と、淡々と・・・。話し終わり、大きなため息・・・。そんな時、そっと「どんな、お気持ちですか・・・?」なら、効果的かと思いますが、キャリコン試験のケースでは考えにくいことですね。受験生には「場面に相応しい応答」という視点を是非持って頂きたいと思います。

また、「~と感じますが、いかがですか?」も最初の段階からやると、話の方向性を決定づけてしまい誘導にもなり兼ねませんので注意してください。


信頼関係の構築、感情の反映まではJCDA、協議会共通のアプローチです。キャリアコンサルタントとして正しく、状況及び感情にかかわってください。最初の段階から、安易に、「お気持ちは?」「~と見えますがいかがですか?」は危険な場合があります。

感情へのかかわりができたら、JCDA、協議会でアプローチが違ってきますので、『テキスト』等で確認しておいてください。

(ご参考)
キャリコン実践研究会』(ホームページ)
実技試験対策『テキスト』のお申込み
テキストと同時に「サブテキスト」(傾聴/論述/口頭試問)もお申込できます。論述対策には『過去問分析』もありますが、これらのお申込には『テキスト』のお申込が前提となっております。詳しくはホームページをご覧ください。

もう一度基本を

第6回論述試験まで2週間ですね。当会も昨日で論述対策講座を終えました。

ご参加の方からは「どうすればいいのか分からなかったが、何とかなりそうに思えてきた」「難しく考えていたが、シンプルに考えれば良かったんだ」などのお声をいただき、お伝えしたかったことがちゃんと届いていて安堵しました。

実際のところ、論述問題をじっくり読み込んでみると、キャリアコンサルティング協議会、JCDAともに目指すキャリアコンサルティングの姿が見えてきます。試験を考えた場合、こうした点をしっかりとらえることが必勝パターンにつながりますね。

また、単発の分析だけではなく、回を追った分析から見えてくるものもありますので、過去問を是非、遡っていただければと思います。

それに、差がつくのは、書き方、表現ではないかと思います。着眼点はいいけれど、解答表現で損をしている。解答練習とともに、出題分析を徹底的に行ってください。論述試験を得点源にすることが実技試験を優位に進める秘訣です。


さて、学科試験や論述試験に時間を取られ、面接試験がおろそかになっている方が結構いらっしゃるようです。合格率が上がり、ハードルが低くなったとは言え、10人の内3~4人は残念な結果になることを考えると、楽観は禁物です。

われわれが重視するのは「受容」ですが、はじめて来られる方々に共通してみられるいくつか気になる点があります。

1つには、安易に「お気持ちは?」「どんな感じ?」と訊いてしまう点。2つ目に「~とっても楽しそうに思えましたが~」と自らの感想を伝える点。そして、不用意な言い換えです。

これらがどうして気になるのかは、講座やテキストでご説明していますので割愛しますが、背景には面談やカウンセリングに関する基礎、基本の理解不足があるのではないかと思います。

しっかりした理論に基づいた基礎・基本は、自分を守ってくれます。面談やカウンセリングはいろいろな答が考えられることから、時には失敗し、迷い、落ち込むことがあります。その時、自分を守ってくれるのはしっかりした理論に基づいた基礎・基本です。基礎・基本が弱いと、迷ったまま抜け出せず、やり方が分からない状態で、もがき苦しむことになりかねません。

先日受講された方も、自主勉強会でいろいろ迷われ、専門家の戸をいくつかたたいたものの、まだ納得できず、当会にコンタクトされました。そして「テキスト」を手にして「やっと分かった、もっと早く知っていれば!」と仰っていただきました。

勿論、ご本人の資質やご経験からのお話だと思いますので、すべての方に当てはまることではないかもしれませんが、当会としては迷われている方にいくつかのヒントをご提供できるのではないかと思っています。

面接試験まで残り3~4週間。形や進め方にこだわらず、相談者中心の基本をもう一度整理し、良質なロープレ練習を重ねていただければと思います。

(ご参考)
キャリコン実践研究会
実技試験対策『テキスト』のお申込み

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