いよいよ今年も始動!という感じがしてきました。そこで、今日は私が日頃考えていることをお伝えしようと思います。これは決して、教科書に書いてあったことでは無く、今迄のいろんな経験の中で私自身が感じ取ってきたことです。従って、気楽にお読み頂ければと思います。

さて、「考える」ことはとても大事なことですが、「考えることが必ずしも大事なことではない」といった場合があります。

どうしてかと言うと、予測不能な事態がしばしば起きるからです。

対人支援業務において、相談者の考えや価値観は千差万別です。時には、思いもつかなかった考えが背景にあったり、理解しにくい思考回路が働いたりします。

その時、支援者(コンサルタントやカウンセラー)は、受容し、共感し、信頼関係を構築しなければいけませんが、この流れを邪魔するものは、予め相談者の中で組み立てられた「考え」なんですね。

受験生を例に上げれば、「相談者は、キャリアに関する相談に来る訳だから、まずこれを訊いて、あれを訊いて、沈黙になりそうだったら、こうやって、ああやって・・・」と、考える。

これが、相談者という「ひと」の理解を難しくしてしまいます。


こうした例を多々見て来ましたので、ロープレ練習の振り返りでは、「考えないで、頭を空っぽにして」と言うことがよくあります。

ですが、なかなか出来ない。

沈黙になったら怖いし、考えてやらなければいけないと思う、第一、考えないで何をやったらいいんだろう、と受験生はいろいろな表情を見せてくれます。

そこで、言い方を変えてみましょう。

ポイントは、「いつ考えるか」なんですね。

古来人間は、考えることを良しとし、常に考えることを求められてきました。しかし、そのことが行き過ぎてしまったためか、考えを先行させてしまうことが多くなったようです。


つまり、展開を予測してはいけない、展開を考えていけない、ということなんですね。

お話を聴くまでは、緊張をほぐし、予測しないで、お話をそのまま受け入れる。フィルターを出来るだけ薄くする訳です。

そして、お話の内容が見えて来て、正確に理解した段階で、初めて「考える」、というのが基本です。「お話を聴いてから考える、この当たり前の順序」。これが本当の傾聴が出来るか否かの分かれ目になるのではないかと思います。

最初から話を聴かないのは論外ですが、結構多いのが早合点です。話の途中で、ああこういうお話ですねと決め付けてしまう。論述試験の「相応しくない応答」の典型です。


経営コンサルティングの世界でも、まずお話を聴く、つまり現状分析をしっかりやるというのが基本です。ここを明確に把握できないと誤った提言をしてしまいます。

サッカーのPKでも殆ど勝ち目の無いゴールキーパーが勝つのは、最後の最後まで動かずにキッカーの動きを見定め、その後に反応した(考えた)場合です。

結構こうしたことは日常生活でも多いのではないかと思います。あれこれ考えても結局その様にはならなかったことって多くありませんか?

無の境地とか、禅問答とかいうものは、ひょっとしたらこのへんの「順序」のことを言っているのではないかと思います。この自然の順序をひとは時々逆にしてしまう。そこに、落とし穴があるのではないかと思います。


「考えないで頭を空っぽにする」ことは結構難しいことだと思います。なぜ、どうして、と”考え”始めたら答は見つかりませんよ。

ここは修行ですね。つまり、実践してみるしかありません。何度も何度も練習/経験して、「考えなくていいんだ」(勿論、考えを先行するという意味です。)と気づくしかないんですね。

そうした意味で、理論(講座)と実践(ロープレ)は併行しなければいけませんし、出来るだけ多くの練習を積むことをお奨めする次第です。

また、その練習が一番できるのは、受験生の時だということですね。

以上、長くなってしまいましたが、振り返りの席でこの話を始めましたら、ブログで読みましたよと制してください。

(ご参考):『キャリコン実践研究会
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